No.12 「春に向かって」

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ページID1013669  更新日 令和8年2月12日

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( 稲城市の教育「イエール」 2月15日 第8号掲載 )

春に向かって

 春も間近となりました。この季節になると、必ず、昔読んだある一節を思い出します。
 故・大岡信さんのエッセイ、「言葉の力」です。中学校の国語科教科書にも長年掲載されていますので、ご記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。この中で、大岡さんは、染織家志村ふくみさんとの対話を紹介されています。志村さんから見せられた「なんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物」について、その色は「桜の皮から取り出した色」「桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな、上気したような、えもいわれぬ色が取り出せる」と聞きます。そして大岡さんは、「春先、もうまもなく花となって咲き出ようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裏に揺らめいた」と綴っています。この文章に出会ってから、私は、花を咲かせる前の時期の桜の木に出会うと、その幹には桜色のエネルギーが一杯に籠められ、それらがピンク色の蒸気となり溢れ出ようとしていると思うようになりました。
 学校という場所は、花や植物、生き物が豊かに生息しています。教員として務める中で、四季それぞれの季節、生徒たちと一緒に、自然の移り変わりに感動の思いを得てきました。特に、稲城市の中学校に勤務した時には、冬の時期、地域・保護者の皆様と生徒が一緒に校庭の花壇やプランターに、花の苗を植える活動がありました。12月・1月・2月と、小さな苗の数々は、寒風の中、水と日光、生徒たちのエールを浴び、一歩一歩育ち、春には色とりどりの花々となり、入学・進級した生徒を華やかに迎えました。この冬から春へと育ちゆく花々の姿は、生徒一人ひとりの成長と重なっていました。
 冬から春へ、自然界の動植物は、体内にエネルギーをしっかりと溜め、躍動したり花開いたりする春に向かっていきます。私たちも、年度の終盤を迎え、新たに迎える年度のスタートに向け、歩を進めています。
 令和7年度の最終ステージに臨み、私は、現時点を、昨年・令和7年中に策定・公表した諸計画・方針の計画実施をさらに充実させるための鍵となる好機であると考えています。
 昨年、稲城市では、策定委員の皆様や学校等にご尽力・ご協力をいただき、「第四次稲城市子ども読書活動推進計画―本はともだち いなぎの子―」(令和7年3月)、「第四次稲城市教育振興基本計画―稲城市教育プラン―」(令和7年3月)、「稲城市立中学校部活動に関する方針」(令和7年10月)を策定・公表し、現在は、それらの計画の実施・推進に取り組んでいるところです。
 これらのうち、本市の教育分野の総合的な計画である「第四次稲城市教育振興基本計画」は、社会の潮流や教育を取り巻く環境の変化を見据えながら、「ウェルビーング」の実現、「グローバル」の時代に活かされる力の育成を図るものとして策定しました。本計画中、特に、子どもたちの成長に関する施策については、「施策の柱2. 未来を創造し生きぬく力の育成の推進」において、「1 確かな学力の育成」「2 豊かな心や創造性の涵養」「3 健康で安全に生活する力の育成」「4 持続可能な社会の創り手を育む教育(ESD) の推進」「5 多様なニーズに対応した教育の推進」「6 子どもたちの学びを支える教育環境の整備」という項目設定をしております。そして、項目「1」から「4」までが目指す「新しい時代に求められる資質・能力の育成」と、「5」が目指す「一人ひとりがもつ長所や強みを大切にしながらの、それぞれの能力・可能性の最大限の伸長」、さらに「6」が目指す「教員の働き方改革、学校施設の整備等の教育環境整備」という、全ての項目の一体的な充実・推進を目指しています。
 稲城市教育委員会はこの計画のもと、令和7年4月から教育施策に取り組んでまいりましたが、そのような中、令和7年9月、中央教育審議会教育課程企画特別部会から、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な考え方としてまとめた「論点整理」が示されました。注目すべきは、「今後の改訂論議を貫く方向性」として、(1)「主体的・対話的で深い学びの実装」、(2)「多様性の包摂」、(3)「実現可能性の確保」を、「三位一体で具現化されるべきもの」として掲げられている点です。このことは、本市「第四次教育振興基本計画」の「施策の柱2.」において、先に挙げた「1」から「6」を同時進行・一体的推進を図っていくものとして設定したことと重なり通じるものであり、本市計画は、社会情勢や時代のニーズを見据え次代に活躍する人材育成に資するものであるとの確証を得た思いでおります。
 この認識のもと、現在、教育委員会は、春に向かって、「次の学習指導要領に基本的重要事項が繋がっていく現行学習指導要領実施の確実な検証」、「多様な教育ニーズに対応するさらなる体制準備」、「教育活動充実と連動した働き方改革の方向整理」に、取り組んでいるところです。
 厳しい冬の時期の一日一日を、大切に、確かな振り返りとエネルギーの確保を積み重ね、令和7年度から令和8年度へと、向かってまいります。

稲城市教育委員会教育長 杉本真紀子

【引用・参考】大岡信「言葉の力」

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